2020年12月6日日曜日

ミヤマシジミ研究会  2020年度研究発表会報告

 

長野県で確認されたナガサキアゲハ
(井原道夫氏の講演スライドより)

ミヤマシジミ研究会の2020年度研究発表会は,125日(土)1330から長野県南箕輪村にある大芝高原フォレスト大芝研修室で実施いたしました。新型コロナの感染予防のために多くの人を集める催し物が中止になっているなか,今年は残念ながら対面での一般公開講演会は取りやめ,ミヤマシジミ研究会会員と関係者を中心に定員を設けて事前参加申し込み制で行いました.一般の方や遠方の会員の方のためにZoomを使ったオンライン参加ができるようにしました.

以下プログラムに沿って内容を紹介します.

1330 開会 

帝京科学大学からオンラインホストの江田慧子事務局長による
総合司会で始まりました。

 1335  井原道夫氏(日本鱗翅学会会員)による基調講演は「最近長野県に侵入したチョウと伊那谷南部のミヤマシジミ」 と題しておこなわれ,長野県南部に分布拡大をしてきたチョウについて詳細な調査データに基づいた興味ある話を聞くことができました.最近長野県に侵入したチョウの講演要旨はブログ最後に添付しました.   

講演中の井原道夫氏

長野県南部に侵入したアカボシゴマダラ
(井原道夫氏の講演スライドより)

侵入種の井原氏の標本.右上はムラサキツバメ,
右下はクロメンガタスズメ(会場に展示)
 

14:15  続いてミヤマシジミ研究会の中村寛志会長「ミヤマシジミ研究会7年間の活動」と題して,平成25年11月設立以来の保護活動や講演会,環境教育活動の成果を報告した.

報告する中村会長

研究会の保護活動(報告スライドより)

シンポジウムや環境教育活動(報告スライドより)

1430 後半は研究会に加盟している団体・企業からの活動報告がなされた.

・横尾早衣子(ミヤマ株式会社)2020年ミヤマシジミ保護に関する活動報告」

長野市のミヤマ株式会社本社からオンラインで報告

飼育個体の作成中の標本を紹介

・内山輝美(伊那市耕地林務課)「伊那市におけるミヤマシジミ保全活動報告」

伊那市耕地林務課の下島課長(左端)が挨拶

耕地林務課の内山氏が市民の森での観察会を報告

鳩吹公園公園での昆虫マイスターの教室風景を報告

・千賀義博(伊那西小学校)「伊那西小学校のミヤマシジミ保護活動」

  伊那西小学校の千賀教諭から3年生のミヤマシジミ保護活動についてビデオによるの報告があった.

幼虫の飼育や成虫の羽化の様子などを生徒たちが解説
(伊那西小学校ビデオ一部)

・中村新一(横山地区ミヤマシジミを守る会)「ミヤマシジミオーナー制について」

伊那市横山地区の守る会会長の中村新一氏.
点から線そして面へのミヤマシジミの生息域の拡大をめざす
今年始めたミヤマシジミオーナー制を紹介

  ・土田秀実(辰野いきものネットワーク)「荒神山のミヤマシジミ保護区」

荒神山のミヤマシジミ保護活動を紹介する辰野いきものネットワーク会長の土田氏.
今年はミヤマシジミ成虫の吸蜜植物についての調査報告があった.

コセンダングサで吸蜜するミヤマシジミ♂

ユウガギクは3化のミヤマシジミには良い蜜源になる

・岡村裕(伊那ミヤマシジミを守る会)「伊那小出諏訪神社隣接地での、ミヤマシジミ新生息地、バタフライガーデンの整備」

ミヤマシジミの定着に成功したバタフライガーデンを報告する岡村氏

バタフライガーデンの生き物

バタフライガーデンの花とチョウ

 16:00 情報交換タイムでは会場やオンライン参加の方からも質問や情報提供があり,活発なディスカッションが行われた.

会場フロアーからの情報提供

1630 最後に中村会長から閉会の挨拶があり,コロナ禍の中ではありましたが有意義な研究発表会となりました.参加者は会場に16名,オンラインに11名で計27名でした. 

閉会挨拶
 
翌日の長野日報に研究発表会の様子が掲載されました

井原氏の講演要旨 
引用される場合は,
井原道夫(2020)「最近長野県に侵入したチョウと伊那谷南部のミヤマシジミ」 ミヤマシジミ研究会2020年研究発表会(長野県南箕輪村)講演要旨,本ブログURLhttps://lycaeides-arygyrognomom.blogspot.com/ 
としてください.



2020年11月30日月曜日

ミヤマシジミ研究発表会のお知らせ


 ミヤマシジミ研究会は,身近な自然環境を大切にし,絶滅危惧種の保全に関心のある人々が集まり,みんなで里山の小さな命を守っていく活動を行っています.その一環として毎年12月に講演会と活動報告会を開催しております.今年は新型コロナの感染予防のために多くの人を集める催し物が中止になっております.そのため今年は,対面での一般公開講演会は取りやめ,ミヤマシジミ研究会会員と関係者を中心に定員を設けて事前参加申し込み制で実施いたします. 
 一般の方や遠方の会員の方は,zoomを使ったオンライン参加ができますので,参加ご希望の方は12月4日の17時までに,事務局(中村)宛 insect2@shinshu-u.ac.jp メールにてお申し込みください.申し込みに必要な情報は,氏名,住所,電話番号,メールアドレスです.折り返しzoomミーティングの招待メールをお送りいたします.
 オンライン環境をお持ちの方のご参加をお待ちしております.

日  時:2020年12月5日(土)13:30~16:00(開場13:00)
会  場:大芝高原フォレスト大芝研修室
対面参加:事前申し込み必要・定員30人
プログラム:
13:00 受付開始(大芝高原フォレスト大芝研修室入口)
13:30 ~ 14:10 
 講演「温暖化と南信地方のチョウ類」 井原道夫氏(日本鱗翅学会会員) 
14:10 ~ 14:30
報告「ミヤマシジミ研究会7年間の活動」 中村寛志(ミヤマシジミ研究会会長)
14:30 ~ 16:30 活動報告と情報交換

ミヤマシジミ3化の♀ 
伊那市上伊那クリーンセンター保護区 2020.9.29


*新型コロナ感染拡大防止のため、参加者はマスクを着用してください.また発熱、咳等の症状がある方は参加をご遠慮ください.受付で検温・手の消毒をいたします.
*今後の地域の感染状況の変化によっては、やむを得ず日程の変更や中止をすることもありますのでご了承ください。

ミヤマシジミの越冬卵 伊那市横山
2020.11.5


主催:ミヤマシジミ研究会  
後援:信州生物多様性ネットきずな,辰野いきものネットワーク,ミヤマ株式会社 
申込み・問合せ先:ミヤマシジミ研究会(会長 中村寛志)
〒399-4511 長野県上伊那郡南箕輪村8021-8
Tel: 0265-74-8426 Mobile 090-3558-5472  E-mail: insect2@shinshu-u.ac.jp

2020年10月8日木曜日

ミヤマシジミの近況報告(4件)

 今年は7月の長雨やそれ以降の猛暑続きの異常な気候で,ミヤマシジミの1化と2化の発生時期がずれ個体数も少なかったのですが,やっと8月後半から第3化の成虫が元気な姿を見せてくれています.私の調査写真や会員の皆さんからのレポートを4件紹介します.

(1) 静岡の佐々木逸郎会員からのレポート

本日早朝(9月13日),天竜川河川敷(静岡県浜松市)の生息地に行ってきました.朝から雨で1時間ほどで上がりましたが,その後も曇りであいにくの天気となりました.それでも成虫は傷んでないのも多く,20頭以上見ました。荒神山ほどではないですが,そこそこ飛んでました.

ミヤマシジミ♂(2020年9月13日,静岡県浜松市)

ミヤマシジミ♀(2020年9月13日,静岡県浜松市)

幼虫は10頭以上見つけました.アリが近くにいるのでとてもわかりやすいです.若齢から終齢までまちまちですが,比較的に草むらの中よりも切れ目のコマツナギに多く見られました.またコンクリートの隙間の小さいコマツナギにもいました.葉も少ないし天敵に見つかり易いのに,ちょっと不思議です.

ミヤマシジミ幼虫(2020年9月13日,静岡県浜松市)

上空からの生息地の状況

上空からの写真ですが,上が陸側,下が川側(天竜川)です.生息地は上部の土手と下部のコンクリート道の少し上(移植した方)になります.初めてドローンで撮りましたが,荒神山も出来たら上空から撮りたいですね.(文,写真:佐々木会員)

(2) 辰野町の荒神山保護区

8月4日,長雨と日照不足で農作物に大きな影響が出ています.昨年は例年より遅い7月30日が2化のピークでしたが,今年のミヤマシジミ発生状況は,7月29日に87頭,8月2日に118頭と更に遅れが出ています.今のところ発生数は昨年と大差がないようですが,2化前半の♀が悪天候の連続で産卵が充分に行えなかったことも考えられます.その結果として3化の発生数や時期にも影響が出るかもしれません.コマツナギの花つきも例年より悪いようです.

9月13日の荒神山ミヤマシジミ観察会,開始前の雨,どうなることかと思いましたが止んでよかったです.乱舞が見られず残念でしたが、少数でも活動が見られたのが救いでした.

観察会で


観察会の日に少し傷んだオスですが,アップで吸蜜の動画が撮影できました(中村)


10月1日,荒神山の発生状況は今のところ昨年より個体数約15%減(7月の長雨の影か).(文:土田秀実会員,写真:中村寛志)

(3) 伊那市横山地区の保護区

伊那市の横山ミヤマシジミを守る会(中村新一会長)では,今年は鳩吹公園の保護区に新たにミヤマシジミの看板を設置.また自分の田畑の畔などにコマツナギを植えてミヤマシジミを保護していくオーナー制を取り入れる活動を開始している.

鳩吹公園公園のミヤマシジミ保護区で
(市民の森昆虫採集・観察会,9月19日)

今年から始まったミヤマシジミオーナー制による
保護活動(横山ミヤマシジミを守る会)

ミヤマシジミ♀,9月22日伊那市横山の保護区

(3) 上伊那市クリーンセンターの保護区
 
伊那市富県にある上伊那クリーンセンターのミヤマシジミ保護区は,今年の異常気象の影響で1・2化の発生数が極めて少なかった.3化の発生は少ないながら,9月29日に5個体確認できた.(文,写真:中村寛志)

ミヤマシジミ♂,まだ新鮮であった.9月29日

♀個体,産卵場所を探索中

保護区看板と新設の上伊那クリーンセンター,
高遠の桜をイメージしたピンク色の建物

2020年9月21日月曜日

令和2年度 ますみヶ丘市民の森 昆虫の採集・観察会

  2020年9月19日(土)に,ミヤマシジミ研究会と伊那市の主催で,ますみヶ丘市民の森において「昆虫の採集・観察会」を実施しました.例年実施している7月の第1回観察会が梅雨の長雨の影響で中止となり,今回が今年初めての観察会となりました。今回初めて,昆虫マイスター初級講座(1)として次のような学習をしながら昆虫の採集と観察を行いました. 

  • 絶滅が心配されているミヤマシジミの観察
  • ミヤマシジミのオスとメスの区別
  • いろんなチョウの仲間を調べる
  • チョウの体を正確にスケッチ



鳩吹公園公園の広場で開会.伊那市耕地林務課の下島課長の挨拶

保護区でミヤマシジミについて中村会長から説明を受ける参加者

  
保護区では10数頭のミヤマシジミ成虫を
観察できました。



親子で熱心にミヤマシジミを観察,いい写真が撮れたかな

今年は新型コロナの影響で家の中に閉じこもりがちであったが,前日の雨も上がり絶好の観察会日和,みんな網をもって昆虫の採集を楽しんでいました.マメハンミョウを捕まえた親子は,有毒だとわかると写真を撮ってそっと逃がしてやりました.

うまく捕まえたかな?

親子で昆虫採集

採集した昆虫の名前を図鑑で探したり,お父さんや講師に聞いたりして調べて観察ノートに記録,また虫のスケッチも描きました.

お父さんと図鑑で捕まえた昆虫の名前調べ


観察記録用のフォトアルバム

調べた虫の名前を中村ミヤマシジミ研究会会長に報告

今回から記録用にフォトアルバムを準備.
マイスター講座の観察記録を保存
講座の資料も残しておこう.自分で撮影した写真もプリントして残せるよ.

自分が採集して名前を調べた昆虫を発表.スケッチもみんなに披露しました.観察できた昆虫はミヤマシジミだけでなく,ツマグロヒョウモンやメスグロヒョウモンなどいろんな種類がいました.最後に,中村会長より修了証書を受け取りました.
参加者は16家族43名でした.

みんなに採集した昆虫の名前を発表

初級マイスターの修了証書を受け取る
修了証書




新聞の紹介記事(長野日報,2020.9.20)